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保存修復:専門

ページ作成: 2008年2月1日 最終更新: 2008年8月18日

紙の保存修復

トレイシングペーパの修復 紙の修復 紙の修復 紙の修復 保存修復後の巻子本

紙は様々な原料の繊維から生成された人工の有機材料です。伝統的に製紙には植物繊維が使用され、その中には、綿、麻、亜麻が含まれ、アジアの紙には、稲、竹、桑も含まれていました。現代の紙は低品質の製品を作る場合、一般的に木のパルプから作られます。

紙は紀元前の1-2世紀頃に中国で発明され、シルクロードを通って西方へと伝わったと考えられています。ホータンが製紙の中心地となり、8世紀には製紙技術がサマルカンドの中国の製紙工とともにアラブのカリフに知られていました。しかし、製紙技術がアラブからヨーロッパへと伝わるにはあと数世紀かかりました。

シルクロード東部から出土した写本の大部分は紙に書かれており、中央アジアからもたらされた紙や現地で作られた紙もあります。現代の紙と比べると、植物繊維から作られた伝統的な紙は保存状態がよく、良い状態で残っています。従って、この地域から出土した紙の文書の多くは良い状態で残っています。

紙と墨の分析

紙厚の測定

紙の分析は、紙製の文物から歴史的、物理的証拠を抽出する調査プロセスです。

科学者や研究者は通常の光学顕微鏡観察からより高度なテクニックまで様々な分析手法を使います。これらの手法が単独又は複数使われ、あらゆる方法で紙の性質を特徴づけていきます。定性分析は紙の組成成分を同定し、各成分量を測定します。化学分析では、例えば、紙の成分や酸度(pH)を評価し、物理分析は強度や色を計測します。紙の分析結果を収集することによって、資料の歴史、起源、年代に関する事柄が次第に明らかにされるでしょう。

IDPは様々な研究者や機関と共同研究を行い、シルクロードの文化財の研究、理解を支援しています。特に、紙や織物の繊維の分析が、様々な国の歴史学者、科学者、研究者からなるプロジェクトとして行われています。 (保存修復プロジェクトを参照して下さい。)このプロジェクトの報告がIDP ニュースレターで出版されており、このウェブサイトから閲覧できます。IDPは画像付きのアジアの歴史的な紙の繊維データベースを作っています。

紙の劣化

旋風装

紙や紙製の文物の劣化原因には多くの要因があります。時間は有機材料の最悪な敵です。その劣化スピードは保存修復を行うことによってしばしば遅らせることができ、まれに完全にストップできます。よごれ、高温、湿度変化、光、害虫、微生物、劣悪な環境等の環境要因が、紙製の資料の劣化を引き起こします。また、利用者の不用意な取扱いや、過去に施された不適切かつ時の流れに耐えられなかった保存修復処理も、劣化の要因になります。

"紙の保存修復は保存修復の専門家による処理の積み重ねであり、劣化を食い止め、さらなるダメージを避けることを目的としています。'interventive conservation' は資料の修復を行い、’preventive conservation' は資料の保管、展示、取り扱い方法等に関する環境整備を行います。 "

紙製のコレクションに関する一般的な問題を以下にまとめます。

Or.2204の剥離した画の部分 保存修復前の巻物 マニ教典断片

IDPで研究されている中央アジア出土の紙の多くが劣化していますが、砂漠の乾燥した環境条件の下では、色焼けや害虫によるダメージはあまりみられません。

処理

保存修復の専門家は文化財の腐食を食い止めるための様々な技術を持っています。どのような処置を施すかは、様々な要因を考慮に入れて決定されます。これらの要因には、資料の状態、将来にわたっての使用目的、歴史的背景があり、文化的に問題のある資料に対しては倫理的な配慮も必要です。

処理は高品質の材料を使って施され、技術は専門領域における最新技術を考慮するために定期的に再検討されます。訓練プログラム、インターンシップ、セミナー、会議等への参加により、保存修復技術者の技術向上がはかられています。

紙写本

中央アジアコレクションの紙写本の大部には、ある種の保存修復処理がなされています。残念ながら、初期の実験的な処理(特に1970年以前の処理)は、資料にダメージを与え、腐食を進行させてしまいました。裏打ちしたところでは、使用された接着剤がしばしば紙の繊維を相互につなぎ合わせてダメージを与え、写本とオリジナルの裏打ちの退色、歪曲、裂けの原因になっています。ある資料は表と裏の両方にシルクのガーゼで裏打ちされています。この種の処理は、紙の柔軟性を制限し、さらに、古くなったシルクはもろくなって紙の繊維に埋まっていきます。シルクガーゼの裏打ちで使用された接着剤も大抵の場合、不適切な処理になっており、資料にさらにダメージを与えます。中央アジア写本に対する最新の処理方法では、裏打ちや表装処理は行いません。

今日行われている保存修復の処理は以下のようなものです。:

紙写本の保存修復に使用される道具:

澱粉糊の準備 紙の修復

事例:

Or.8210/S.766の保存修復とデジタル化

4点の敦煌写本の保存修復のビデオ

製本

処理を施す際に、保存修復技術者は資料の元の形態を考慮、理解しておく必要があります。シルクロード東部の本には様々な形態があり、初期の古写本には巻子から貝葉本まで様々な形態が存在します。これらの例を製本のページで紹介しています。

織物の保存修復

マニ経典の織物

Textile' は一般的に織物や編物を指す言葉で、knitting、braiding、looping、lace making、netting等の技法を使って紡ぎ糸を織り交ぜたものを指します。ここでの織物のカテゴリーにはフェルトやその他の方法で作られた織られていない繊維状の物も含みます。織物の製造で使われる繊維は天然の物と人工の物が存在します。天然繊維には、綿、羊毛、絹、亜麻、黄麻があります。19世紀から再生セルロースのポリカプロラクトン、ポリエチレンのテレフタレートのようなポリマーから生成された人工繊維の開発が進められ、レーヨンやナイロンといった製品名で身近な物になっています。

織物は、紙と同様に、湿気にとても弱いですが、中央アジア東部の砂漠の乾燥した環境がそれらを保存し、多くの織物が敦煌や遺跡から発見され、その中には状態の良い物も含まれていました。織り方やデザインが単純な物から複雑な物まで様々あり、織物の研究者に対して多くの情報を与えてくれます。保存修復の観点から、素材、織り方、顔料に関して調べることは重要です。

敦煌やその他の遺跡の織物の保存修復に関する概要は、 The Stein Mellon Textile Project at the V&A を御覧ください。保存方法の詳細に関しては、Storage of the Stein Loan Collectionを御覧ください。

文物の保存修復

ラワク出土の腐食した中国の五銖銭

文物の保存修復技術者には立体の文物のケアと保守責任があります。文物の保存修復技術者は、石材、金属、ガラス、陶磁器、植物由来、動物由来、人工の材料のようなあらゆる有機、無機の材料を扱います。

中央アジアの東部の遺跡から発掘された資料には、スタッコ、粘土、木、植物繊維、金属(コイン)のような文物が沢山あります。

この保存修復作業では、様々な材料で作られている文物に対する調査や処理が行われます。ある文物は、例えば家具のように機能的役割を持っていることもあり、このような保存修復には柔軟な対処が必要です。その他の専門調査と同じように、保存修復処理を行う前には各文物の調査、写真撮影、記録を行い、状態の総合的な記録を残しています。

クリーニングは共通して行われる処理です。;表面の汚れがソフトブラシで除去され、または低度の吸引力をもつようにセットされた特殊な吸引機できれいにすることもあります。文物の表面のしみや汚れは綿棒や溶剤を使って除去します。また、しみや汚れを除去するような化学製品を使用することもあります。様々な材料を対象としているので通常行われている処理が適用できないこともあります。頻繁に使われる処理方法もあります。例えば、劣化した着色層の補強や壊れたりひび割れた文物の修理による補修が行われます。

敦煌の窟の内部

壁画の保存修復

中央アジアの東部には、敦煌の千仏洞のほか、キジル、ベゼクリクに仏教壁画が沢山存在します。世界中の機関へと持ち去られた壁画を除いて、多くの壁画が 現地 に残されています。 敦煌壁画の保存修復に関する詳細は Getty Conservation Institute siteを御覧ください。 サンクトペテルブルクのエルミタージュで保存修復されているベゼクリクの壁画に関しては、 Hermitage siteを御覧ください。

デジタル保存

デジタルデータの保存はIDPの課題の一つです。デジタル保存に関する発行物や外部リンクに関しては、 大英図書館の デジタル保存のページを御覧ください。

保存修復とデジタル化

IDPは中央アジアのコレクションへのアクセスの利便性を向上させるということ、その一方でそれらの長期間にわたる保存を確立すること、という一見したところ相反する目的に取り組もうとスタートしました。オリジナル資料に手を触れることが保存に対する最大の脅威の一つである以上、この二つの目的を満たすことは資料所蔵機関にジレンマを引き起こしていました。目録等に掲載されている写本のマイクロフィルムや写真のような代替え品のみが部分的な解決法でした。一般的にマイクロフィルムは機関によって保管されているのでそのアクセスは制限されており、また通常は白黒のフィルムです。複写した出版物、特に大きなコレクションは、高価かつ非実用的であり、これもアクセスが制限されます。しかし高速インターネットと高品質デジタル画像生成技術がこの状況を一変しました。IDPは直ちにこの優位性に着目しました。

従って、デジタル化とデジタル資料へのアクセスは、オリジナル資料へのアクセスを減らし、資料保護の促進にもつながります。しかし、デジタル化を行う際の資料の取り扱いと、照明が資料に与える影響を考慮する必要があり、IDPはこの問題を重く受け止めています。デジタル化を行う前に、各資料は保存修復の調査を行います。デジタル化の際には取り扱いと照明の照射量を最小限に抑え、冷光源のみを使用します。資料は、傷つくことがないように特別にデザインされた台に置かれて撮影されます。この方法では、撮影前に資料の種類に応じて調整、適応が行われます。IDPのフォトグラファーは資料の取扱い訓練を受け、保存修復技術者や学芸員と協調して作業を行っています。

前述のデジタル化に関する事項は、文化遺産をデジタル化する際の基本事項です。デジタル化は短期間で高予算で行うことによって、デジタル化による保存修復にかかるコストを低く抑えることができ、長期的なコスト削減につながります。また、できる限り高品質な画像を作ることは、再デジタル化の費用を抑えることにつながります。

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